NSW州賃借人の権利の手引き
Residential Tenancies Act 2010(2010年住宅賃貸法)は賃貸住宅に居住する賃借人の権利と義務を規定する法律です。NSW Civil and Administrative Tribunal(NSW 州民事行政審判所)は、この法律に基づいて家主と賃借人(借主)の間の争いを審理します。
入居時
賃借人の権利
- residential tenancy agreement(賃貸契約書)の写しを受け取る。契約書には全家主に使用が義務付けられている標準書式があります。これは法的拘束力のある契約書です。
- 家主が記入したcondition report(物件状態報告書)の写しを受け取る
- 2週間分を超える家賃の前払いは要求されない
- 家主に支払うbond(敷金)は全額NSW Fair Trading(NSW州公正取引省)に預入されることとし、敷金は家賃4週間分以下とする
- 屋外のスペースを含め、安全かつ清潔で、妥当な状態の環境が与えられる
自分の義務を忘れないでください
- 契約開始から7日以内に自分の所見を記したcondition report(物件状態報告書)の写しを家主に提出する。契約終了時にbond(敷金)を巡る争いが生じた場合、このcondition report(物件状態報告書)が重要な証拠となります。
賃借期間中
賃借人の権利
- 家賃を現金または小切手で支払う場合には、領収書を受け取る
- 賃借家屋の独占使用と安居権が確保される
- 妥当な安全性と防犯性が確保される
- 必要な修理は妥当な時間内に実行される
- 家主が訪問を望む場合には予告を受ける。緊急の修理が必要な場合を除き、修理の場合には2日前、査察の場合には7日前に予告を受けることとする
- 家賃が値上げされる場合には、60日前に書面による予告を受け取る。家賃の値上げに異議を唱えることができますが、その場合には予告を受け取ってから30日以内にNSW Civil and Administrative Tribunal (NSW 州民事行政審判所)に申し立てることが必要です。
自分の義務を忘れないでください
- 滞りなく家賃を支払う
- 賃借物件を大切に扱う
- 修理や保守管理が必要な場合には報告する
- 公共料金を支払う
- 家主からの書面による許可がない限り、改築や増築を行わない
- 家主からの書面による許可がない限り、錠を付け替えない
- 近隣住民の治安、安楽、プライバシーを侵害しない
- 物件を不法な目的に使用しない
- 又貸しや賃借権を他者に譲渡するなど賃借条件に変更を加える場合には、家主から書面による許可を求める
退去
賃借人の権利
- 契約打切りの場合には適切な書面による予告を受け取る。賃借人が契約を遵守していない場合、または家賃の滞納が14日分となる場合には、家主は14日間前に予告することが必要です。
- 契約に終了日が明示されており、家主が退去を望む場合には、家主は終了日の30日前に予告することが必要です。その期日を過ぎた場合には、契約の打切りには90日前の予告が必要です。
自分の義務を忘れないでください
- 退去する際には、適切に予告する。有期契約終了時に契約を終了する場合には、14日前に書面による予告が必要です。有期契約期間終了前に退去する場合には、家主に対し手数料または補償金を支払う義務が生じる場合があります。周期的(継続的)契約を終了するには、21日前に書面による予告が必要です。
- 通常の損耗を除き、入居した時と同じ状態で退去する。
NSW Civil and Administrative Tribunal(NSW 州民事行政審判所)
審判所は、家主と賃借人(借主)の間の争いを審理します。家主との間で同意に達することができない場合には、審判所にあなたの権利を保護する命令を出してもらうよう申請してください。審判所が法律に基づいた審判を下します。
家主には立ち退きを強制することはできません。立ち退きを強制できるのは審判所のみです。
推奨事項
- まずresidential tenancy agreement(賃貸契約書)を読むことから始めましょう。理解できない場合には、援助を求めましょう。
- 問題があれば家主または家主の代理人に自分が望んでいることを告げましょう。自分が言ったことまたは同意したことは、書面にして確認するようにしましょう。代理人は家主に雇われていることを忘れないでください。
- いつどんな会話があったかを含め、自分と家主または家主の代理人とのやり取りを書き留めておきましょう。 また、以下の書面の写しを保管しておきましょう。すなわち、
- residential tenancy agreement(賃貸契約書)
- condition report(物件状態報告書)
- 家賃とbond(敷金)の領収書
- 文書、Eメール、メモなどの記録。
- 未記入の用紙や理解しない書面には決して署名しないようにしましょう。
- 審判所から審理の予告が届いたら、家主から出席しなくてよいと言われても、必ず出席すべきです。
- 家賃の支払いを止めたら、退去を求められることを忘れないでください。家賃不払いストはうまく行きません。
- 当団体のホームページwww.tenants.org.auには、賃借の開始、家賃の値上げ、修理、家屋のシェア、アクセスとプライバシー、公共料金、家主が契約を終了する場合など、様々な状況に関する概要説明文書があります。
さらなるヘルプ
Tenants Advice and Advocacy Services (賃貸借助言支援センター): 最寄りのTenants Advice and Advocacy Service(賃貸借助言支援センター)に連絡し、無料で独立したアドバイスを受けてください。長距離電話の場合には、職員が喜んで折り返し電話します。
通訳が必要であれば 131 450 に電話してください。
この概要説明文書は法律の手引きとして書かれたものであり、法律相談の代わりとなるものではありません。オーストラリア国のニューサウスウェールズ州に適用されるものであり、この地域に居住し、この法律の影響を受ける人に適用されるものです。© Tenants’ Union of NSW July 2015(NSW州賃借人組合2015年7月)
この刊行物はLaw and Justice Foundation of NSW(NSW州司法財団)から経済的援助を受けて作成されています。この財団は、特に社会的かつ経済的に不利な立場の人々に対する司法制度の公平と公正を推進し、司法制度の利用を向上させることを目指しています。免責事項:この文書に記載されている意見は、書面を作成した個々人の意見であり、必ずしもLaw and Justice Foundation(司法財団)理事会の見解を反映するわけではありません。www.lawfoundation.net.au